電気の力で走行する電気自動車(EV)は、環境問題への関心の高まりとともに注目を集める次世代自動車です。
電気自動車は電動モーターでクルマを駆動させるため、外部から電気を取り込む必要があります。充電インフラは全国的に整備が進んでおり、一般家庭でも簡単な工事で設備を整えることができます。
この記事では、電気自動車の充電設備や料金相場、充電方法別のメリット・デメリットについて解説します。電気自動車の導入をお考えの方はぜひ参考になさってください。
電気自動車に電気を蓄える方法
電気で走る次世代自動車には、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)などがあります。二酸化炭素や排気ガスを出さないクリーンな自動車として、世界中で普及が進められています。
電気自動車の充電設備は大別して次の2種類です。
- 急速充電設備
- 普通充電設備
電気自動車の普及には充電インフラの整備が欠かせません。
政府は充電設備の導入に際して本体価格の1/2以内で補助をおこなっており、充電インフラの整備が拡大しています。ガソリンスタンドの数は減っていますが、電気自動車の充電スポットは近年急増しているのです。
街中にある急速充電設備
急速充電設備とは、コネクタを充電口に差し込むだけの簡単操作で電気自動車を短時間で充電できる設備です。
2020年3月末時点では全国に7,800カ所以上あり、高速道路のサービスエリアやガソリンスタンド、カーディーラー、コンビニエンスストア、道の駅などに設置されています。
プライベートでの利用はごく限定的であり、大勢の人が利用するパブリックな充電方法です。
30〜60分で80%程度まで電気を蓄えられ、長時間の移動途中や緊急時の電欠に対応できます。バッテリー負荷を避けるために満タンにせず、80%程度を上限とするのが一般的です。
自宅に設置する普通充電設備
普通充電設備とは、自宅での利用が可能な充電設備です。戸建てやマンション、ビル、屋外駐車場などに設置でき、スタンドタイプや壁掛けタイプ、コンセントのみのタイプがあります。
自宅の駐車場など限られたプライベートスペースに設置するなら、壁掛けタイプかコンセントのみのタイプが向いているでしょう。
普通充電用のコンセントには100V用と200V用があり、コンセントを新設する場合は電気自動車のさまざまな車種に対応できる200V用が推奨されています。
すでに設置されている100V用コンセントでは対応できないケースが多いため、電気自動車用に新たにコンセントを設置するのが一般的です。
充電時間は長く、200Vでは4〜8時間程度かかります。時間帯によって電気料金が変動するプランを契約している場合は、安価な夜間電力を活用することで料金を抑えられます。
電気自動車の充電にかかる料金を比較
電気自動車を充電する場合、どのくらいの料金がかかるのでしょうか。
急速充電設備の場合
街中の充電スポットを利用する場合は、NCS(日本充電サービス)や各自動車メーカーが発行する月額料金制のカードを使います。
月額料金を支払えば急速充電が規定回数分無料になったり、普通充電を無料で使えたりするお得なカードです。
「日産リーフ」などの電気自動車を販売する日産自動車では、「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3(ZESP3)」というサービスプログラムを提供しています。
日産自動車の充電サービスプログラム
プレミアム
10 |
プレミアム
20 |
プレミアム
40 |
シンプル
|
|
---|---|---|---|---|
プランに 含まれる 急速充電回数 (10分/回) |
10回分 | 20回分 | 40回分 | 設定なし (都度課金/ 10分500円) |
月額 基本料金 |
4,000円/月 | 6,000円/月 | 10,000円/月 | 500円/月 |
3年定期 契約料金 |
2,500円/月 | 4,500円/月 | 8,500円/月 | 設定なし |
なお、カードの発行にあたっては手数料として1,500円(税別)がかかります。
急速充電設備を利用する場合、料金は走行距離や回数によって大きく変わってきます。
日産自動車では、月間走行距離800km以内なら「プレミアム10」、1,600km以内なら「プレミアム20」、1,600km以上なら「プレミアム40」、ほぼ自宅でまかなえるなら「シンプル」を推奨しています。
急速充電設備では、5分間の充電でおよそ40km走行できます。日産自動車のサービスプログラムにあてはめた場合の費用は次のとおりです。
- 100分間:2,500〜4,000円(800km程度走行可能)
- 200分間:4,500〜6,000円(1,600km程度走行可能)
- 400分間:8,500〜10,000円(3,200km程度走行可能)
プラン内に含まれる充電回数を超えた場合は別途料金が発生します。
普通充電設備の場合
自宅に設置できる普通充電設備は、契約する電気料金プランによって電気自動車の充電にかかる料金が変わります。
時間帯単価が異なるプランは夜間の電気料金が日中よりも3割程度安くなるため、夜間に電気自動車を充電すれば料金を抑えることができます。
東京電力エナジーパートナー株式会社の電気料金プランには、夜間帯の料金が安くなる「夜トク8」と「夜トク12」があります。各プランの電気料金は次のとおりです。
夜トク8の電気料金(1kWhあたり)
午前7時〜午後11時 | 32.74円 |
---|---|
午後11時〜翌午前7時 | 21.16円 |
夜トク12の電気料金(1kWhあたり)
午前9時〜午後9時 | 34.39円 |
---|---|
午後9時〜翌午前9時 | 22.97円 |
参考:東京電力エナジーパートナー株式会社『夜トクプラン』(https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/yorutoku/index-j.html)
電気自動車の電費(1kWhあたりの走行距離)を6km、ひと月の走行距離を800kmとした場合に必要な電力量は約133kWhです。東京電力エナジーパートナーの夜間料金にあてはめた場合の費用は次のとおりです。
- 21.16円(夜トク8)×133kWh=2,814円
- 22.97円(夜トク12)×133kWh=3,055円
日中料金にあてはめた場合の料金は次のとおりです。
- 32.74円(夜トク8)×133kWh=4,354円
- 34.39円(夜トク12)×133kWh=4,574円
必要な電力量は同じですが、料金単価が異なると大きな差が生じます。電気自動車の充電は、料金が安い夜間におこなうのがおすすめです。
補足:時間帯単価が異なる電気料金の注意点
時間帯によって料金単価が異なるプランでは、日中の電気料金が割高になっているのが一般的です。
東京電力の場合、24時間料金が変わらない従量電灯プランでは300kWh以上でも30.57円(1kWhあたり)と、夜トクプランの日中料金よりも安くなっています。
東京電力の従量電灯プラン
〜120kWh | 19.88 円 |
---|---|
120〜300kWh | 26.48 円 |
300kWh〜 | 30.57 円 |
参考:東京電力エナジーパートナー株式会社『料金単価表‐電灯(従来からの料金プラン)』(https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/chargelist01.html)
夜間割引プランは、電気自動車の充電も含め夜間の電気利用量が多い方に向いているでしょう。
自宅よりも出先での急速充電設備の利用が多い場合は、時間帯で単価が変わらない従量電灯プランの方がお得になる可能性があります。
充電方法別のメリット・デメリット
電気自動車の充電方法には、短時間で充電できる急速充電設備、自宅に設置できる普通充電設備があります。
基本的には自宅で充電し、外出時に充電が足りなくなったときに急速充電を利用するのが一般的です。
近年は電気自動車の普及に向けて全国的に充電インフラが拡大し、必要に応じて柔軟に充電方法を使い分けられるようになりました。
ここでは、それぞれの充電方法のメリット・デメリットをご紹介します。
急速充電設備のメリット・デメリット
急速充電設備のメリットは、30〜60分程度の短時間で電気自動車の充電が完了することです。普通充電設備では4〜8時間程度かかるため、いかに短い時間で充電できるかがわかります。
しかし、急速充電設備は高速道路のSAや道の駅などに設置されており、短時間充電が求められる場所での利用が想定されています。
電気自動車の充電として日常的に使うには、まだまだ利用できるスポットが限られるかもしれません。
また、短時間とはいえ30〜60分程度はかかるため、他の電気自動車が利用している場合は充電が終わるまで待つ必要があります。
普通充電設備のメリット・デメリット
普通充電設備のメリットは、自宅の電気設備でも気軽に導入できることです。
寝ている間や出かける前に自宅で簡単に電気自動車を充電でき、ガソリン車のようにガソリンスタンドへ行く必要はありません。
電気自動車の充電に対応できるコンセントの設置や充電器の取り付け費用などがかかりますが、自宅に充電設備があればクルマのランニングコストを大きく抑えられます。
しかし、充電時間は4〜8時間程度かかるため、充電を忘れていた場合はかなりの時間を待たなければなりません。
ガソリン車であれば給油が終わり次第すぐに利用でき、急速充電設備であれば30〜60分で80%程度まで充電が完了します。電気自動車の充電時間の長さはネックに感じる方も多いでしょう。
【まとめ】ガソリン車よりも料金を抑えられるEVがおすすめ
電気自動車の普及に欠かせない充電インフラは全国的に拡大し、街中のコンビニエンスストアやガソリンスタンド、ディーラー、高速道路のSAなどさまざまな場所に充電スポットが設置されています。
街中のスポットを利用するには、各自動車メーカーなどが提供する月額料金制のサービスプログラムに加入するのが一般的です。
また、電気自動車の充電設備は自宅にも簡単に導入でき、料金が安い夜間電力を利用すればよりお得に充電できます。
電気自動車の充電にかかる費用はガソリン車よりも安く、将来的なランニングコストを抑えられるでしょう。
車両価格の高さからなかなか手が出しにくい電気自動車ですが、国・地方自治体では補助金制度や税金の優遇措置によって普及を促進しています。
新車を購入する際は、電気自動車も選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。